栗栖ひよ子著の『夕闇通り商店街 コハク妖菓子店』を読みました。
神社の奥に現れる不思議な商店街「夕闇通り商店街」。
そこは悩みを抱えた者が引き寄せられます。
よくばりな気持ち、透明人間になりたいという願望、言いにくい本音──一度は悩んだことがあるかもしれないような悩みを抱えた者たちがこの物語には登場します。
登場人物達の悩みに思わず「分かる!」と言ってしまいそうなほど共感できた物語を、ぜひあなたも楽しんでください。
作品情報
書名: 夕闇通り商店街 コハク妖菓子店
著者: 栗栖ひよ子
出版社: ポプラ社
ページ数: 221ページ
文庫本
Kindle版有 (2024年10月現在)
この本をおすすめする人
- 他人に嫉妬してしまう人
- 本音をなかなか言えない人
- よくばってしまう人
あらすじ
「夕闇通り商店街」――そこは幽世と現世の境目にあり、妖たちが営んでいる。
幽世との境界があいまいになったとき、心が不安定な人間が導かれたように訪れるのだ。
容姿端麗な店主が営んでいる『コハク妖菓子店』には、変わった名前のお菓子が並んでいる。
まるで自分にあてはまるような名前に訪れた人間たちはつい手にしてしまう──。
読んだ動機
不思議な話大好き!なので今回のように悩んでいる人だけが辿りつけるっていう場所の話が気になって買ってみました。
表紙もなんだか可愛くてお気に入りです。
感想
個人的にはめちゃくちゃ好きな物語でした。
登場するのは年上の彼氏との付き合いに不安を感じよくばりになってしまう女子高生、自分の容姿が大嫌いな会社員、彼氏の自慢ばかりの友達に嫌な気分になっている女子大生、同級生をライバル視している女子中学生、育児に疲れ夫からの愛情も分からなくなってしまった女性。
個人的に自分の容姿が大嫌いな会社員、彼氏の自慢ばかりの友達に嫌な気分になっている女子大生、同級生をライバル視している女子中学生はかなり共感できました。
特に同級生をライバル視している女子中学生の梨沙は、私も負けず嫌いで内心めちゃくちゃライバル視していることあるのでめちゃくちゃ共感してしまいました。
そんな梨沙が選んだお菓子は「みがわりキャラメル」。
他人に不幸を押し付けるようなキャラメルです。
梨沙は吹奏楽部でトランペットを吹いていて、同級生の彩香をライバル視していました。
ソロパートのオーディションで彩香に勝つためにキャラメルを食べた梨沙。
その結果、彩香はいつもならしないようなミスをしてしまい、ソロパートに選ばれたのは梨沙でした。
その後、彩香が隠れて泣いているのを見つけた梨沙。
彩香が自分よりも練習を頑張っていたことも知ってしまい、後悔した梨沙はオーディションのやり直しを申し出ました。
それだけでも凄いことだと思うんですが、梨沙はきちんと性格も改めるようになります。
自分の足りなかった部分をなおして授業も部活も集中して取り組むようになって、親や友達から褒められるようになり彩香とも前より良い関係を築けるようになりました。
そこで梨沙は気付きます。
がんばっていれば、必ずだれかが見てくれている。今までこんなに努力した経験がなかったから、そんなことにも初めて気づいた。
『夕闇通り商店街 コハク妖菓子』栗栖ひよ子
私はこれすごく刺さりました。
頑張っても褒めてもらえることないなぁって思うこともあったんですけど、多分努力が足りなかったんですよね。
コツコツでも続けていけばいつか褒めてもらえるまでの努力になってるかもしれませんね。
あと最後の「さよならの豆大福」はコハク妖菓子の店主である狐月のお店を始めるきっかけの物語となっていて、これがじんわりと心にくるんですよ…。
「さよなら」という言葉の意味で想像ついてしまう方もいらっしゃるかもしれませんが、感情が乏しいと言われる狐月の心が地味に動き出しているのが切ない気持ちと嬉しい気持ちがあって、複雑な気分でした。
それでも狐月がお店を始めたからこそ今回の登場人物達は救われた部分があって…狐月がもっともっと感情を知った後の物語も読んでみたくなりましたね。
ちなみになんですが、この物語が好きな人はおそらくこちらも好きだと思うのでぜひ読んでみてほしいです!
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